- 中国医学について
- 中国医学の基礎概念
- 中国医学と
西洋医学の相違 - 中国医学と
西洋医学の違い - 中国医学の
基本的な特色 - 陰陽五行説
- 陰陽説
- 五行説
- 中国医学の生理学1
- 中国医学の生理学2
- 経絡と経穴
- 病気の原因
~病因論~六淫~ - 病気の原因
~病因論~七情~ - 病気の原因
病因論~不内外因子~
中国医学について
中国医学は、人体の生理・病理に対する研究を基礎にし、疾病の予防・治療を目指す学問であり、数千年に及ぶ臨床経験と疾病に対する研究に裏打ちされた独特の理論体系を有する学問である。
中国医学においては、人体を有機的に統一された整体としてとらえたうえで、人体に発生した病変と自然界の変化との関わり、あるいは病変自体の特徴やその経過、ならびに治療によって生じる変化などを観察し、数千年という長期にわたって蓄積した独特の理論体系をもつ医学へ形成発展させてきた。
この結果、人体の生理・病理などの基礎概念、病変の発生原因と進行に対する認識、診察法と診断法、治療法、薬物学、処方学、鍼灸治療など、全ての分野にわたって系統的な理論によって統合された医学体系が構築された伝統医学です。
しかし、日本では中国医学を医学と認めていないので未承認医学の位置づけであり、その代表的な漢方薬(※)も未承認薬の扱いとなり、日本国内での生産・販売はもとより入手得た中医薬を譲渡することもできません。
唯一、個人で輸入して自己責任で服用する場合のみ使用が認められています。 ※日本の漢方とは、少し異なります。
幸福堂では、この個人輸入の手配を代行する形で皆様にできる限りのサポートをさせていただいています。ただし、中成薬の推奨や個人ごとの病状に合わせた中医薬の推奨は、医師法および薬事法の事由により、日本国内ではできませんので中国現地での中医師に相談してからの手配であることをご理解ください。
中国医学の基礎概念
- 数千年の臨床経験を持つ経験医学である:安全性が高い
- 心身全体の調和を図る:内因重視、臓腑機能の調和を重視
- 個人差を重視する:異病同治(数種の疾病が共に同じ性質の証候に由来する場合には同一の方法で治療を行うこと)、同病異治(同じ疾病でも病人の身体の反応の相違により現れる証候が異なる場合は、患者によって治療法が異なること)
- 天然薬物を使う:副作用が少ない、治療の安全性
- 多種生薬を組み合わせた「複合剤」:多彩な効果が現れる
- 未病を治す:病名未決定者に対しても対証療法ができる
- 病人を治す:全体像をみる
数千年にわたる中国医学の治療法には、薬物の内服(処方薬) による内治法以外に、外用、鍼灸、按摩など様々な方法がある。
- 湯液療法
- 煎剤などによる薬物療法
- 鍼灸療法
- 経穴(ツボ)を鍼や灸で刺激して、内臓及びその他の器官を調和させる治療法
- 按摩療法
- 経穴(ツボ)や経絡を、手で揉んだり押したりすることで体を調和させる治療法
- 気功療法
- 呼吸法を中心に、ゆったりとした運動法を加え、体内の気を回らせる治療法
- 食膳療法
- 健康保持と病気の治療、老化防止などを目的として、中国の医学の理論に基づいて薬用価値のある食物や生薬を配合し調理した料理による療法
中国医学とは、約三千年前より中国を中心として発達・発展してきた経験医学である。
独自の生理観や病理観[陰陽五行説、気血津液説、臓腑説、経絡説、病因説、及び診察法(四診;望診・聞診・問診・切診)、治療法(薬物療法、非薬物療法、鍼灸、按摩、気功など)、予防法(未病を治す)、養生法(薬膳、食養生)]をもつ、一つの体系化された医学。
人体の生理・病理などの基本概念から、病変の発生と進行に対する認識、診断法、治療法および治療手段としての薬物の効能の認識まで、西洋医学とは異なる以下のような優れた点がある。
中国医学と西洋医学の相違
中薬 | 新薬(西洋薬) | |
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基源 | 天然物 | 合成物 |
配合の論拠 | 処方構成理論 | 対症的 |
成分 | 多成分 | 単一 |
作用・臨床効果 | 緩和 | 強力 |
効果発現 | 遅い | 早い |
作用点 | 複数 | 単一 |
廃薬後の症状 | 安定 | 再発 |
中国医学と西洋医学の違い
中国医学 | 西洋医学 |
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中国医学の基本的な特色
中国医学の基本的な特色は大きく分けて二つあります。一つは、整体観(人体の全体性を重視する、人体と自然界との間の密接な関係を重視する)、もう一つは弁証論治(中国医学独自の疾病を研究、治療する基本原則)。
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- 整体観
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中国医学では、人体の内臓と体表の各部分の組織・器官を一つの有機的な全体とみなすと同時に、四季の気候、土地や産物、環境などの要因の変化が、人体の生理・病理に対して一定の影響を持っていると考えて、人体内部での内蔵の協調と整体性、また、人体と外界の環境の統一性を重視した。このような問題を全面的に捉える観点から一貫して疾病を診断し、治療するのであって単に局部的な変化だけに着眼するのではない、これを整体観という。
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- 人体と自然界の統一性
- 自然界は人類が生存するための第一に必要な環境である。人間は、自然界の中で生活しており、たえず自然環境の変化の影響を直接的、あるいは間接的に受けている。そして、人体は外部環境の変化に合わせて、その都度自身の生命リズムを調整し、外界の変化に対応させている。いわゆる「自然の中に人がいて、人の中に自然がある(自然界を大宇宙、人体を小宇宙)」とした考え方である。また、人体の内的環境は自然界(季節、気候、昼夜などの日内変動、地域、風土まで)に加え、生活環境(仕事、人間関係、飲食など)といった外的環境とも密接な関係にあり、人体の内的環境はこれらの外的環境に影響されやすいのである。 また、自然界にみる四季と同じ変化が身体の中でも起きている。春は温暖、風、梅雨は湿気、夏は暑熱、秋は乾燥、冬は寒冷という自然法則があり、体の動きと自然界の動きが一致していれば健康に過ごせる。自然の変化を無視した生活や外界の変動が適応能力を超えた場合、あるいは人体内部に機能失調や機能低下があるために外界の変化に対応できない場合には、健康を損ない、疾病を発生する。
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- 人体は有機的な統一体
- 人体は、様々な要素(気、血、津(しん))液(えき)、精、臓腑(ぞうふ))を基本にして構成されており、互いに連絡しあう有機的に完成された整体(統一体)である。人体を構成するそれぞれの組成部分は、互いに密接に連絡し、生理的には互いに作用し強調しあい、病理的にも互いに影響しあっている。臓と臓、臓と腑、体表と内臓、気と血、内臓と経絡など様々なものを相互の関連の中で把握しているところから、局所の病変であっても必ず全身との関連に基づいて原因を弁別し、根本的な治療を行う。
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- 弁証論治
- 弁証論治は、中国医学の独特な診断・治療体系である。中国医学の臨床では、必ず弁証論治の過程をとる。診断・治療においては、疾病の病因・病位・病性・正気と邪気の力関係などを総合分析・判断し、証(総合的な病態)を決定する事が重要であり、これを弁証と呼ぶ。弁証に基づき、相応する治療方法を確定し、これにしたがって具体的な治療を施す。これを論治と呼ぶ。
陰陽五行説
陰陽五行説とは、古代中国の哲学理論と自然観に基づいた思想である。
人々が経験してきた事実を、自然界の現象にてらして整理・分類し、理論化したものであり、さらに、中国医学においては、陰陽五行説という自然哲学を人体にも応用した。
つまり、人体にも陰・陽があり、このバランスがとれていれば健康、バランスが乱れた状態が未病、バランスが崩れた結果が病気であり、乱れたり崩れたバランスを回復させることが治療であると考えました。
※未病:未病とは、病気が症状としてはっきり現れていない段階(病気の前段階)である。人間の身体には、健康・病気という二つの状態だけがあるのではない。病気と診断されて治療の対象となる前のどことなく具合が悪い健康とは言えない状態が未病である。 ※未病を治す:中国医学では、病気を防ぐために、未病であるうちに生活習慣を見直すことが何よりも大切なことだと考えられています。本格的な病気になっていないときに、病気の兆しをとらえて適正な治療法および養生法を行います。「未病を治す」には、三つ意味があります。- 食養生などにより、健康維持・疾病の予防をする。
- 兆侯の症状があるときに病気の兆しをとらえて、適正な早期治療を行う。
- 疾病の進展の傾向をつかむ。
陰陽五行説は、陰陽説と五行説からなり、陰陽説では、自然界に存在するすべての事物は陰と陽との二つの要素・性質から成り立ち、さらに陰と陽は互いに対立し、かつ影響しあうものとしています。五行説では、宇宙間のすべての事物や現象は、木(もく)・火(か)・土(ど)・金(こん)・水(すい)という五つの要素により構成され、これらの相互資生(生まれること)と相互制約に基づいた運動変化が万物を変化・発展させるとしている。すなわち、五つの要素は互いに変化し、影響しあい成り立つものとしている。
陰陽説
陰陽説は、全ての事物・現象は陰と陽の二つの性質から成り立っていると考えます。全ての事物の存在は天と地、昼と夜、熱と寒、火と水、動と静などのように、陰陽の紀の対立・統一の結果であり、それらの相互作用により変化発展していると考えられます。 陽は興奮や活動、活発の性質を持ち、陰は抑制や静止、衰退の性質を持ちます。全てのものは陰陽どちらかに属しているがその中でたとえば陽の中にも陰があり、陰の中にも陽が存在する。また、陰が陽に変化することもあり、陽が陰に変化することもある。 人体の内外、表裏、上下各部分の間、有機体の物質と物質、機能と機能、機能と物質の間で、必ずその陰陽の相対的協調関係を保持し、正常な生理活動を維持している。すなわち、陰陽が相対的に協調してバランスを保っている状態が健康な状態である。疾病とは、何らかの原因によりこの引用の相対関係が崩れた状態である。
- 陰陽の関係
- 陰陽の関係には、対立、制約、互根、消長、転化がある。
- 《中国医学における陰陽説の運用》
- 陰陽説は中国医学の理論体系の様々な方面に貫かれており、その応用は非常に広範囲にわたっている。自然界のすべてのものを陰と陽の両面で捉え、人間の健康状態もまた、この陰陽のバランスの調和で成り立つと考える。病気は、人体中の陰陽のバランスが崩れる事により生じ、その崩れたバランスの状態を見出し、整えることにより、病気を治療する。
五行説
古代中国では、全ての事物は木・火・土・金・水という5つの要素に分けられ、それらはそれぞれの特徴を持っている上に互いに養い(相生)、牽制しあう(相克)かたちで相互関連しると説かれている。
五行の関係には相生と相克の二面があり、互いに影響しあって関係を保っている。また、五行の相乗・相侮関係は五行の相克関係の中で現れる異常現象のことである。人体においてこの五行のバランスが崩れが病的状態にあたる。
- 相生と相克、中医の中での意味合い
- 木は燃えて火になります、火は灰となり土を生み出します、土の中からは鉄等の金属を生じます、金属は水分を放出します、その水分がまた木を生み育てます。このように五行が全て揃って永久機関のようにぐるぐると循環し続けるのを最もよしとします。これらの関係は「相生(そうじょう)」といい、良い関係であるとします。互いに力を与える、若しくは与えられる、いわば仲良しというわけです。それに対して火は金を溶かしてしまいます、土はきれいな水を濁らせてしまいます、金は木を傷つけ倒してしまいます、水は火を消してしまいます、木は土の養分を吸い取ってしまいます。これら仲の悪い関係を相剋(そうこく)関係と言います。相克ですが、悪い関係と書きましたが実際は抑制する意味合いでの使われ方(行き過ぎを止める作用がある)と考えてください。
五行では相生と相克の関係をこのように考え、中医学では、相生と相克の関係はいずれも大事でこの関係がバランスよく保っている状態が一番望ましいと考えます。
この相生・相剋の関係が壊れると、人体では体調や精神面での不調が出たり、ひどい場合には病気になったりします。このバランスの崩れにはふたつのタイプがあります。
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ひとつは抑制が強すぎる場合で、これを相乗(そうじょう)といいます。
暑い夏に夕立があると涼しくなります。暑さを抑制するために適度な雨は必要です(水剋火)。しかし、この雨も梅雨の延長のような長雨になれば、冷夏をもたらします(水乗火)。また暑い時、適度のクーラーは暑さでバテるのを防ぎますが(水剋火)、過ぎれば体を冷やしすぎて、風邪をひいたり、お腹をこわしたりします(水乗火)。 -
もうひとつは抑制が逆に働く場合で、これを相侮(そうぶ)といいます。
一本の煙草の火を消すには、コップ一杯の水があれば充分です(水剋火)。ところが、火事で激しく燃えさかる炎にコップ一杯の水を掛けてても、火は消えるどころか水を蒸発させ、更に延焼を続けます(火侮水)。体液成分などの水分代謝は、体が適度に温まることで活発になります(水剋火)。しかし、熱射病などで必要以上に体が温まると、体液成分も消耗し、脱水症状が起こります(火侮水)。
このように相生・相剋のバランスの崩れは、人体においても悪影響を及ぼします。
さて、表を見ると、五行にはそれぞれ当てはまる臓腑や味などがあることがわかります。この表からも味自体に異なるはたらきがあると考えていることが見て取れます。
たとえば、梅干しなど酸っぱいものを食べると、口の中や体がキュッと縮まる感じがします。中医学では、酸味には収斂作用があると考えます。ところでレバーを調理する時血抜きをしますが、これはレバーすなわち肝が血液を貯める器官なので、他の臓物類よりも血を多く含むからです。酸味には収斂作用があるわけですから、これは肝の血液を貯めるはたらきを助けることができるわけです。妊婦など普段よりも血液を必要とする人が酸味を欲しがるのもこのためと考えられます。しかし、身体に良いからといって酸味ばかり摂りすぎると、収斂のしすぎで返って全身に血液を巡らすことができなくなり、血行が悪くなったり、月経が不順になったり、体調を崩す場合もあります。
このような関係は他の四つのグループについても成り立っています。五つのグループ間でも、相生や相剋の関係があるわけですから、五つの味もバランスよく摂ることが大切です。
中国医学の生理学1
中国の思想で「気」とは、目に見えない生命の根源的なエネルギーと考えます。「気」は生き物の基本的な要素であり、人の心の動きも、身体の構造と機能も「気」によって支えられていると考えます。健康な状態では、「気」はバランス良く体内を循環しています。「気」の流れに乱れが生じると、病気や不快な症状を起こすとされています。その症状は、現代医学でいう自律神経系や内分泌系の症状に相当します。
「気」が逆履修して上昇してしまう状態を上衝(じょうこう)と言い、のぼせの症状が見られ、不眠や腹部の苦悶感、膨満感、げっぷ等が見られます。「気」が上昇して停滞した状態を気鬱(きうつ)と言い、倦怠感、食欲不振などの症状が見られます。「気」の力が減衰したり、量が不足した状態を気虚(ききょ)と言い、疲れやすく、眩暈や風邪をひいたりするのが特徴です。「気」は、多すぎても、少なすぎても、停滞しても病気の原因になると言われます。
- 哲学的な4つの「気」
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- 衛気
- 感染症や病気とたたかう防御作用が強い
- 元気
- 成長促進、活力を旺盛にする作用が強い
- 宗気
- 臓器や血液の流れをよくする推動作用が強い
- 営気
- からだに栄養を行き渡らせる作用が強い
「気」は生命のエネルギーですが、健康を維持するには「気」だけでは出来ません。「気」、「血」、「水」の三つの要素がバランスよく体内を循環する事が大切だとされています。
「血」は、気の一部が液化したもので赤い液体の事をさします。単に血液であるだけでなく血液の働きも意味します。血の流れが停滞するとをおけつと言い、口渇、下腹部痛、肌荒れ、黒ずみ、月経異常などを起こします。不足すると血虚(けっきょ)といい、顔色が悪かったり、皮膚の乾燥、目のかすみ、手足のしびれなどがみられます。
「水」も気の一部が液化したもので透明な液体をさします。髄液や尿、汗などが含まれます。水は血から分かれたもので血と同じように変調をきたすと、下降したり、停滞したりします。停滞し偏在している状態を水毒と言い、全身のむくみや水太り、関節液が滞ることによる関節痛、腹水、胸水、頻尿、せき、たん、けいれん、手足の冷えなどが見られます。
「気」、「血」、「水」の異常は様々な症状を起こしますが、そのほとんどが三つの絡み合いの中で異常をきたします。
中国医学の生理学2
五臓とは、「肝」、「心」、「脾」、「肺」、「腎」の五つを指し、充実・緻密な性質を有する器官であり、主な生理機能は気血水などの体内の必要な栄養物質のエッセンスを生成、貯蔵する事にあります。
- 心の生理
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- 循環機能(血脈を主る):血を全身に循環させる。
- 臓神機能(神を蔵す):精神、意識、思考活動を司る。睡眠のリズムも調整する。
- その他:舌の働きを維持する。
- 肝の生理
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- 疏泄機能(疏泄を主る):全身の気を順調にめぐらせる働き。気、血、水の運行を助け、水穀の消化・促進する。正常な情志(精神)活動を促し、精神状態を安定させる。
- 蔵血機能(蔵血を主る):血を蔵し、全身に栄養を供給し、循環する血液量を調整する。
- その他:筋の働きと目の働きを維持する。
- 脾の生理
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- 運化機能(運化を主る):食物を消化・吸収し、水穀の気を生成し、全身に栄養を送り出す。
- 統血機能(統血を主る):血が経脈を流れるさいに、脈外に漏れ出すことを防ぐ働きをする。
- 昇清機能:水穀の精微などの栄養を心や肺、頭部に運ぶ。脾の昇清作用は内蔵を吊り上げている。この働きが弱まると、胃下垂や脱腸、脱肛などが現れる。
- その他;筋肉の形成、維持を行う。全身の筋肉に栄養を送り、手足の力を維持している。
出やすい症状は、食欲不振、抑鬱などである。 - 肺の生理
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- 呼吸機能(呼吸を主る):大気から清気を吸い込み、体内の濁気を吐き出し、水穀の気と清気の一部で血を作り出し、一部を水(津液)に転化し、生命を維持している。
- 宣発・粛降機能:宣発と粛降の作用によって水液の代謝を調節する。
- その他:皮膚の機能を制御し、その防衛力を維持する。
- 腎の生理
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- 蔵精機能(精を蔵す):精を蔵し、体の成長、発育、生殖能力と深く関わる。腎の機能は、腎陽と腎陰の二つに分けられ、臓腑の働きの根本となっている。腎陽は、促進、温める機能で、腎陰は滋養、潤す機能を行う。
- 気化機能(津液を主る):水(津液)の運搬、排泄、調節する働きである。脾、肺と協調し津液の代謝を行う。
- 納気機能(納気を主る):呼吸能を維持する。
- その他:歯、髪、骨の形成、維持と関わる。腎は髄を生み、精気によって養われる。髄は、骨髄と脊髄、脳髄に分けられる。
六腑とは、「胃」、「小腸」、「大腸」、「胆」、「膀胱」、「三焦」を指し、管腔性臓器であり、主な生理機能は水穀(飲食物)を受納し、消化して、栄養分を吸収し、糟粕(便や尿)を排泄することであり、この五つの臓と六つの腑を併せて五臓六腑と言います。
- 胃の生理
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- 受納・腐熟機能(受納・腐熟を主る):受納は受け入れ、納めること、腐熟は水穀を消化して、ペースト状にする胃は水穀の海と呼ばれる。胃の受納・腐熟機能は脾の運化機能と協力して行われる。
- 昇清・降濁機能:飲食物の消化は、主に脾と胃の協調による昇清、降濁の過程である。脾気は昇清を主る。胃気は降濁を主る。脾気は水穀の精微を肺に送り(昇清)、胃は腐熟しおわった飲食物を一つ残さず小腸に送り出す(降濁)。
- 小腸の生理
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- 受盛機能(受盛を主る):小腸は胃で腐熟し終わった飲食物を受け取り更に消化を進め、飲食物の中から気血を作り出すもととなる水穀の精微を取り出す。
- 清濁分別(清・濁の分別を主る):小腸は胃で熟成消化された飲食物を受納し、それを栄養分(水穀の精微)と不要なもの(糟粕)に選別して、栄養分を脾に送り、残渣のうち水液を膀胱に固形物は大腸にそれぞれ送って体外に排泄させる。
- 大腸の生理
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- 排泄機能(大便の生成と排泄を主る):大腸は小腸から受け取った糟粕(残渣、固形物)の中から、さらに水分を吸収し、残りを便として排泄する。
- 胆の生理
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- 胆汁の貯蔵と排泄(胆汁を蔵す):胆汁の貯蔵庫。胆汁は肝により作られ、飲食物の消化を助ける。肝の疏泄機能によって胆が胆汁を小腸に排泄し、水穀(飲食物)の消化・吸収を助ける。胆汁の分泌、排泄は肝の働きで維持される。
- 決断力を主る:精神意識・思考活動において、物事を判断し、決定を下す作用がある。胆の決断力は勇気と深くかかわる。精神的刺激による悪い影響の排除・防御をし、気血の正常な運行を維持・コントロールし、臓腑間の協調関係を確保する。
- 膀胱の生理
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- 尿の貯留と排泄:体内の不要な水液が肺と小腸から膀胱に降ろされ、腎の気化作用によって尿として体外に排泄されます。
- 三焦の生理
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衛気と津液の通路:三焦は衛気・水液のめぐる通路であり、臓腑の外衛である。三焦は全身各所の機能を推進する。部位として、胸郭以上の部分と心、肺を上焦。胸郭以下、臍部以上の部分と脾、胃を中焦。臍部以下の部分および肝、腎、大腸、小腸、膀胱を下焦と言う。
上焦は、衛気の宣発と精微の運搬作用を総括したもの
中焦は、水穀の消化・吸収と気血の生成作用を総括したもの
下焦は、水穀の泌別と不要物の排泄作用を総括したもの
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衛気と津液の通路:三焦は衛気・水液のめぐる通路であり、臓腑の外衛である。三焦は全身各所の機能を推進する。部位として、胸郭以上の部分と心、肺を上焦。胸郭以下、臍部以上の部分と脾、胃を中焦。臍部以下の部分および肝、腎、大腸、小腸、膀胱を下焦と言う。
これとは別に、寄恒の腑と言い「脳」、「髄」、「骨」、「脈」、「胆」、「女子胞(子宮)」の六つを指し、六腑とは異なる形態および生理機能を有する。寄恒の腑は水穀と直接関わる事はなく、主な生理機能は精気を蔵することにある。中空で腑の形態に似るが、精気を蔵する臓の機能にも似ているため『奇恒(通常でない)』と呼ばれる。
- 脳、髄、骨:いずれも腎精から産出される。腎精は髄(脊髄、骨髄)を生じ、髄が集まって脳を形成する。骨髄からは骨が造成され身体を支える。脳は、髄の集まったもので高度の神経活動は全て脳の働きに属し、心、肝、腎等の機能が統合されたものであるとされている。髄は、主として脊髄をさすが、骨髄も含めた概念です。脳・髄の働きが衰えると、思考は低下し、倦怠感や疲労感が強まります。さらに、聴力や視力が衰え、眩暈や耳鳴り等が現れる。髄は骨に栄養素を補給しているため、この髄の働きが衰えると、骨の成長が鈍り、骨が脆くなる。
- 脈:血液を循環させる通路であり、血脈と呼ばれる。全身に散布し、血の潤養を与える。
- 胆:六腑の一つであるが、一方では奇恒の腑にも属している。胆は腑と同じ機能を有している。しかし、腑と違うことは排泄するものは糟粕ではなく、清々の液(胆汁)である。
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女子胞:女性の性器(子宮・卵巣)を指す。主な生理機能は月経、妊娠、分娩を主ることである。
月経:女子は14歳前後に達して、腎気が旺盛になると、生殖能力を促進する発育物質(天癸)の作用によって月経がはじまり、胎児を生育する能力をそなえるようになる。
経絡と経穴
気は全身を巡っている、その通り道が経絡であり、内臓や手足の末端など全身くまなく行き渡り気を運んでいる。その経絡上にあるのが経穴・・・そうツボと言われるところ。経穴は経絡を流れる気の状態が身体の表面に現れるその状態を見ることで気の状態(内臓の状態)を知ることができ、そこを指圧やマッサージなど施術することで身体の調子を整えることが出来る。経絡の作用には、生理面・病理面・治療面がある。
- 生理面
- 気血を運行し、陰陽の調和をはかり、外邪から身体を防御する。
- 病理面
- 病邪を伝送する、病状を反映する通路。
- 治療面
- 鍼灸による刺激を伝導し、臓腑の虚実を調整する。中薬の帰経作用をを主る。
経絡は、経脈と絡脈の二つからなり、人体の深いところを縦に流れる主要な脈を経脈と言い、経脈から横に分かれる脈を絡脈と言う。絡脈は浅いところを網目状に全身くまなく通っている。
経脈には、正経と奇経があり、正経とは手・足それぞれの三陰経と三陽経の十二経脈で、奇経とは督脈・任脈・衝脈・帯脈・陽維脈・陰維脈で奇経八脈と言われる。
十二経脈は更に深い部分を走る十二経別があり、筋肉、皮膚を十二経脈に配当した十二経筋、十二皮部がある。
絡脈は、経脈の分枝であり、比較的細く小さい。経脈と経脈をつなぐものを十五絡脈と言い、絡脈から更に枝分かれするものを孫絡、浮絡と言う。
- 十二経脈
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十二経脈は、気・血運行の主要な通路であり、人体の両側に対照的に分布し、それぞれ上半身か下半身の外側または内側を循行して臓腑の一つに関係している。と文章では説明があるが転記では判りにくいのこの分だけ簡易的に紹介する。
十二経絡の循行と接続には一定の法則があり、六臓六腑の機能にたいおうしたもので六臓の経絡を陰、六腑の経絡を陽と分け、それぞれに名称がある。経絡は、それぞれの臓器を通り、肺経から肝経へ繋がり、再び肺経へと戻り循環している。- (十二経絡の循行)
- 「手太陰肺経」→「手陽明大腸経」→「足陽明胃経」→「足太陰脾経」→「手少陰心経」→「手太陽小腸経」→「足太陽膀胱経」→「足少陰腎経」→「手厥陰心包経」→「手少陽三焦経」→「足少陽胆経」→「足厥陰肝経」→(督脈)→(任脈)→《手太陰肺経に循環する》
- 奇経八脈
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奇経八脈は、十二経脈以外の経脈であり、督脈・任脈・衝脈・帯脈・陽維脈・陰維脈の八本からなる。規則性はなく、臓器との肝経、表裏の関係もない。奇経八脈は十二経脈間の連携を密接にし、気血の運行を調節する。肝・腎・子宮・脳・髄などと密接な関係がある。奇経八脈は、疏通・連絡・統率・調節作用がある。
- 《十二経別》
- 経別は、正経に離・合・出・入する別行の部分であり、十二経脈から分かれて体の深部を循行する。十二経脈中で表裏をなす経脈間の連携を強めるとともに、正経が循行しえない器官や部位に通達する。
- 《十五別絡》
- 別絡は、経脈から分かれたかなり大きな絡脈で大多数は体表に分布し、本経の近隣を循行する。別絡から分かれた細小の絡脈を孫絡、皮膚表面に分布する絡脈を浮絡と言います。
- 《十二経筋》
- 経筋は、十二経脈に連なり属する筋肉系である。四肢の末端に起こり、筋肉、健、関節などの比較的浅いところを走り、臓腑とは直接関係はない。
- 《十二皮部》
- 皮部は、経絡が分布する体表の皮膚であり、十二経脈に応じて十二皮部と呼ばれている。
経穴、一般にツボと呼ばれているもので経絡の循行している通路上にあり、経絡上に点在する特異点であるとともに、鍼灸を行う重要な診察点・治療点である。経穴は各内臓器官(臓腑)に連絡する。臓腑・経絡の生理機能を増強させ、また人体の病理的な変化を改善する体表の刺激点である。
全身の経穴の数は古典には1年の日数と同じ365と記載されているがWHO(世界保健機関)で認定されているのは361である。
経穴は気血の集まるところであり、気血の不調や臓腑の変調は経穴の反応となって現れる(反応点)。外邪は、体表の経穴を通じて経絡中の気血の循行を乱す。したがって、経穴を刺激することによって経絡を通じて各臓腑の機能を調節することが出来るのである。
- 治療への応用
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経絡は調節し、平衡を保つ機能をもつので経絡に相応の刺激を与えることにより疾病を治療することができる。経絡の上にある経穴を鍼や灸で刺激することにより、経絡を通じて各臓腑の機能を調節し、疾病を治療することができる。薬物治療、鍼刺麻酔、耳針療法、電針、気功、按摩なども、経絡の概念が必要となる。
- ツボ押しのポイント
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- 力を入れすぎないこと:理想的な圧力は3-5キロ程度の力を“垂直”にかえること
- 呼吸に合わせてツボを押すこと:息を吐くときに筋肉がゆるむのでこの時に圧力を加え、吸う時に力を抜くと筋肉を傷めにくくなる。
- 長時間、ツボを押さないこと:長時間押し続けると感覚が麻痺し、効果が少なくなります。一ヶ所のツボならば1分-1分半程度、一日朝晩2回程度が良いとされます。
病気の原因~病因論~六淫~
健康な状態とは、気・血・津液や五臓六腑・奇恒の腑・経絡のバランスが保たれている状態であり、このバランスが生理的な状態を超えて崩れ、元の状態に戻らない状態を病気と言い、生体の正常なバランスが崩れる原因を病因と言います。
病因とは、人体に疾病を発生させる原因のことで外因(外感性発病因子;六淫)、内因(内傷性発病因子;七情)、不内外因の三つに分類されます。
このほか、様々な原因によって起こる病理的産物も新たな病変を生じる発病因子とされています。
中国医学の古典『黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)』では、「正気存内、邪不可干」(正気が胎内に存せば、邪気は犯すことあたわず)と記載がある。
正気は、生体内のすべての抗病物質ち臓腑、経絡、気血津液の正常な機能の総称。
つまり、人体の疾病に対する防御力、抵抗力、免疫力、再生能力を言う。
邪気は、発病要因と病理的損害を言う。
生体内の正気が充実していれば、外邪・内邪いずれであっても予防し、病気は起こらない。
もしも、種々の原因(体外、体内)で正気が虚衰していれば邪気が虚に乗じて体内に侵入し、
疾病がもたらされる。
正気の虚衰は二つ原因がある。
稟賦(生まれつき)の不足と後天の調養の欠損と栄養不良である。
稟賦とは、先天的な遺伝要素のことで親から授かった体質の原因とも関係がある。
しかし、生後生活の不摂生、不養生などによって栄養バランスが崩れ、
後天の調養の欠損(病気)が起こる原因になる。
病因とは、文字どおりの病気の原因である。発病因子とも言われる。
生理機能を破壊して疾病を引き起こす様々な原因や条件である。
現代医学の場合は、病気が起こる原因はウイルス、細菌、遺伝子異常などがあるが、
中医学では発病因子を三つに分類する三因論による。
- 六淫(外感性発病因子)
-
中医学では、自然界で人体を包む大気は六種類の気に分けられるとし、
風・寒・暑・湿・燥・火(熱)で六気と呼びます。
この六気は自然界の自然現象なので普通の状態では人体には害ではありません。
しかし、その六気が激しく変化し、生体の適応能力を超えるほど異常となるか、
生体が虚弱な為に気候の変化に対応できなくなると発病の原因になります。この時の六気をそれぞれ「風邪」、「寒邪」、「暑邪」、「湿邪」、「燥邪」、「熱邪(火邪)」と呼び、 合わせて六淫と言います。
六淫は、外感の発病因子として疾病を引き起こす場合は、外感六淫と呼び、
いずれも口鼻あるいは肌膚(皮膚)から体内に侵入して発病させるます。「風邪」、「暑邪」、「燥邪」、「熱邪(火邪)」は陽邪であり、「寒邪」、「湿邪」は陰邪になります。
外感六淫の発病は、季節と関連が深く、春は風が多いため風病が多く、
梅雨の時期には湿度が高いため湿病が多く、夏は暑いため暑病が多く、
秋は空気が乾燥しているため燥病が多く、冬は寒さが厳しいから寒病が多い。六淫の外邪は、それぞれに異なった性質を持ち、体内への侵入経路、伝播様式、
発生する諸症状が異なるとされている。六気の一つ「風(ふう)」は、何処からか移動してくるもの、空気の動きの概念をいい、
そよ風などの“かぜ”とは少し意味が異なる。「風」自体が悪い訳ではなく、風が体に毒なものを運んでくるとされるので、病気の原因と考える。
「寒」とは、文字通り寒さ、冷えのことで体に寒が入ると悪寒や発熱、頭痛、足腰の冷えなどの
症状を起こします。更に、深部に入ると吐き気や腹痛などの症状を起こすと考えます。「暑」は温度の上昇のことを表し、暑邪が体に入ると高熱が出たり、口が渇く、
多汗あるいは無汗、頭痛、イライラなどの症状を起こすと考えられています。
夏バテや炎天下に激しい運動をして脱水症状を起こす熱中症などが代表的です。
暑さに無防備に生活することは体力を消耗し、病魔に襲われやすいと考えます。「湿」は、湿気の多き季節や水に接する環境下に起こりやすく、自然と気が滅入り、
そこに病魔が入りやすくなります。
湿邪が体に入ると体内の水分がうまく排出されなくなります。
その結果、食欲不振、消化不良、悪心、お腹の張り、湿疹、関節の痛み、
運動障害などの症状を起こすと考えられています。「燥」は、湿の反対で乾燥状態を言い燥邪が体に入ると体内の水分不足の状態を生み、
鼻腔乾燥、鼻出血、口の渇き、唇の荒れ、のどの乾燥や痛み、皮膚の乾燥、咳などの
症状を起こします。適度な潤いを肌や体内を保つことが病気を防ぐことになります。「熱・火」は、暑を超えて熱が激しくなった状態を言います。
熱邪と火邪とは程度の違いがあり、火邪>熱邪>暑邪となる。
火邪が体に入ると高熱、顔面紅潮、目が赤いといった症状、皮膚の炎症、
やけどなどの症状を起こします。
灸治療のやり過ぎなど、やけどを生じるような高温度刺激も火邪となります。
からだを温めることは治療の基本ですが、度を過ぎると害になるということを頭に置き、
自然の流れに身をおいて生きることが大切だとされます。
病気の原因~病因論~七情~
六淫は外感性発病因子、読んで字の如し、「外から感じる(関わる)ことで(病を)発生する要因」である事柄に対して、七情は内傷性発病因子を言います。これも字よりお解りになるかと思いますが、「(体の)内が傷つくことによって(病を)生じる要因」のことです。
七情は、三つある病因の一つの内因のことで過度の精神的負担や情緒の変動などが病の原因になることを説明しており、「喜」、「努」、「憂」、「思」、「悲」、「恐」、「驚」の七つの感情を言います。
七情は、ごく自然な感情では病変を発生するには至りませんが、精神的な緊張や情緒的な変化が過度になったり、長時間持続したりすると、生理的に調節できる範囲を超え、この七つの感情は体に悪影響を及ぼし、気・血・津液や臓腑の働きを乱す要因となります。
これを内傷七情と言い、七情の刺激は次の臓器に直接影響を与えているとしています。
- 《七情が与える臓器》
-
喜:愉快・興奮の情緒→喜びすぎると『心』を損傷する。
喜ぶと言う感情は、心を明るくし、和やかにする良い感情ですが喜びが過ぎると気が緩み、
心身を消耗させます。努:憤慨・緊張の情緒→怒り過ぎると『肝』を損傷する。
怒ることを「気が逆上する」と言いますが、あまりにも強く、そして長期にわたって怒ると「気」は
上昇し、肝や他の臓器を傷つけると考えられています。この時の「肝」は臓器そのものではなく、精神活動の安定化や栄養素の代謝と解毒、血液の貯蔵と循環と言った働きのことです。憂:苦慮・気鬱の情緒→憂慮しずぎると『肺』を損傷する。
思:思考・判断の情緒→思いすぎると『脾』を損傷する。
様々なことに不安を覚え、心配に気をもみ、「憂う」「思いこむ」。
この状態が過度に続くと「脾」を傷つけると考えます。
「脾」は食物の消化・吸収を司り、血液の循環をなめらかにする、筋肉を形成したり維持する
という働きがあるとされているところです。悲:悲観・哀痛の情緒→悲しみすぎると『肺』を損傷する。
「悲しい」気持ちは生命エネルギーである気を消失させます。
この状態が続くと肺を傷つけるとされます。
肺は呼吸によって全身の気の流れを総括するところでもあります。恐:恐怖の情緒→恐れすぎると『腎』を損傷する。
「恐れる」と言う感情は、心を緊張させ、免疫力を低下させます。
恐怖心にとらわれた状況が続くと、「気」が下降し、「気」や「血」の乱れが生じるとされています。驚:驚きの状態→驚きすぎると『心』・『腎』を損傷する。
「驚く」と言う感情は、思いもよらない事態に我を忘れる状態で、極度の緊張状態にあります。
この驚きの度合いが過ぎたり続くと、精神的なストレスが大きくなり、感情は不安定になります。「驚いて気が動転する」と表現があるように「気」が乱れると考えられています。孔子の言葉で『過ぎたるは猶及ばざる如し』と言う言葉があります。
孔子の弟子が兄弟子と自分とを見比べての度合いを孔子に聞いた時の言葉で「兄弟子は過ぎるし、弟弟子は及ばざる」との答えに兄弟子の方がやっぱり優れているのかを再度問うた時の孔子の返事です。何事にも程度と言うものがあり、その程度を過ぎるとかえって不足するのと同じように
良くないことを言っており、気にし過ぎる弟弟子に気付かせたかったのでしょう。皆様は、過ぎたる感情をお持ちでないでしょうか?
病気の原因病因論 ~不内外因子~
その他の発病因子としては、不摂生・不養生から来るものと体内の病理的産物によるものがあります。
『不摂生・不養生』では、飲食による食べ過ぎや偏食は脾胃を痛め食積(脾胃の運化が異常をきたすこと)を形成し、肥甘厚味の過食や飲酒の過度などは湿熱を発生させます。また辛味の過食は胃熱を発生させ陰液を消耗し、反対に生冷(冷たいもの・生もの)の過食は脾腸を障害して、寒湿を体内から発生させます。
暴飲暴食と同じく過労も要因の一つとされます。
過労には、心労(精神的過労)、身労(肉体的過労)、房労(性行為の過剰)の三つがあります。
心労は、精神の疲労を言い、頭の使いすぎや、考えすぎ、心配しすぎなどがあたり、心血を消耗したり、脾の運化作用を邪魔します。そのため、不安、不眠、動悸、疲れやすい、食欲がない、身体がだるい、肩がこるなどの症状が現れます。心労は、七情の思の過度なものとも考えられます。
身労は、過度の肉体疲労を言い、気血が消耗されるため、身体がだるい、疲れやすい、めまい、食欲がないなどのさまざまな症状が現れます。
房労は、過度の性行為(セックス)による疲労を言い、セックスをし過ぎると腎精が消耗され、性欲がなくなり、足腰がだるくなり、疲れやすい、耳鳴りなど腎精不足の症状が現れます。
また、運動不足によって気血の運行を停滞・減衰させ、肩こり、背中の張り、腰の痛み、筋力の低下、肥満症などの症状が現れます。
そのほかに、外傷・事故・災害・中毒・寄生虫なども病気の原因になります。
これ以外に、各種の原因で体内の血・津液が正常代謝を失って生じた病理的産物[水湿、痰飲]も病因として見られ、これらは体内で新たに病気を生みだす重要な因子となり、臓腑に直接あるいは間接的に悪影響を及ぼします。
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病因論~不内外因子~